夢をもつことの話

 社会人2年目の1ヶ月が過ぎてゴールデンウィークにはいった。2年目の僕はいったい、何が変わったというのだろうか?1年という時間は恐ろしく早く過ぎていったことを実感している。人間的に大人になったなんてことは少しも思わない。確かに新しい発見はあったかもしれない、でもそれは自分を変えるには至らない。自分はいつまでたっても自分のままなんだなと感じた。今まで、いろいろなことから逃げてきた。逃げて、逃げて、逃げてきた結果が今の自分を生んだ。僕は昔から人前にたつとあがる性格かつ、人見知りが激しい。だから今の仕事が嫌いだ。これも逃げている結果なのかもしれない。客先に行っても何を話せばよいのか分からず、結局仕事の話だけして帰ってしまう。相手が話し好きならよいが、あまり話をしない人だと嫌な間が作られる。初めて会う人にでも、くだらない世間話ができる人間になりたい。もちろん、くだらない世間話だけじゃなく、仕事でのプレゼンテーションもうまくなりたい。人前で堂々と発表がしたいと思う。でも、大勢の前だと急に何をしゃべれば良いのかわからなくなってしまい、客先でのプレゼンも結局丸暗記した内容を読むだけで、後は先輩や技術の人にまかせっきり。会議に至っても、自分の意見は全く言わずにただただ聞いてるだけ。疑問があっても、質問をしない。もし、自分の考えが違ったら、もし、反論されたら、もし、もし、「もし」のことばかり考えて行動に移さないでいる。人前で堂々としゃべることができれば、今の仕事はそんなに苦になることではない。むしろ楽しいのかもとすら思う。もしかしたら、営業になってしゃべれるようになるのかもしれないという期待は抱いたが、そういった機会から自ら逃げてきたので上手くなるはずはなかった。営業じゃなくても、技術者だって大勢の前で話せる能力は必要とされるのは痛感している。人間として何かが欠けてるような気がする。勉強にしたって同じことだ。英語をもっと勉強しようと思った。情報処理の勉強をしようと思った。でも思うだけで、行動に移そうとしない。仕事の忙しさにかまけて、逃げてきた。勉強をする時間なんて作ろうと思えばいくらでも作れるはずなんだ。そういった努力から逃げ出してるだけなんだ。楽な道、楽な道にばかり進もうとして生きてきた。今の仕事だって、自分に合わないと思ったら辞められる道だってあるんだ。それでも、周りの目、世間の目ばかり気にして行動に移せないでいる。損得や後先のことばかり考えて行動に移せないでいる。そういえば、最近こころから怒ったことがない。人前で怒れないのは周りの目を気にしてるからだろう。もちろん、心では怒ってる。感情を抑えるようになっちゃまった。着々とストレスとして溜まってきているのを、自分でも感じてるのに、何の改善もしようと思わない。そんな情けない人間になっちまった。こんな大人にはなりたくなかった。僕の恩師がプロには少なくとも3つの壁があると言った。(1)その分野の技術・知識・ノウハウを極めること、(2)他人の壁を突破すること、(3)自分の壁を突破すること。僕はこの全ての壁を越えることができないでいる。壁から逃げているんだ。僕の欠けているものは「夢」がないってことかもしれない。高校、大学、大学院と単に「技術者になる」という漠然な考えしかなく、「夢」をもってなかった気がする。将来の夢を語るのに自分の能力と比較して考えてしまう。能力なんて後からついてくればいいんだ。今、何がやりたくて、何を目指したいのか、それがあればいいんだ。同い年の友達にフリーターをしているやつが2人いる。1人は小学校からの友達で、バンドのボーカルをしている。確かに「売れる、売れない」といったレベルまでいってないが、夢を持って、そいつを実現する為に努力をしている。もう1人は、大学からの友達で、一度は就職していたが、自分のやりたいことを探して会社をやめた。今は、ヘリコプターの操縦士を目指している。2人ともはたから見ればいい年してフリーターかと思われるだろうが、確実に夢に向けて努力をしている。そんな、2人を羨ましく思う。たとえ、その夢が他人にばかにされるような、実現がとても無理と思われる大きな夢だとしても、夢をもってる奴を夢を持たない奴が笑う資格はない。いま目指してるものと、何かが違うと感じたら、その軌道を自ら変えられる人間にならなきゃダメなんだ。そんなことを思いながらも、仕事の忙しさに負け一日一日を無駄に過ごすんだ。そして、何年かたって年老いた自分を見て、後悔するのだろう。後悔する時にはもう遅いんだ。とにかく、今の僕に必要なのは「夢」をもつことだ。そして、先生のいう3つの壁を突破できる人間になりたい。('99/5/1)


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