ぼったくりバーの話

 以前、お約束したようにトルコで起きた怖い話をご説明します。解決してからと思ったのですが、実はまだ未解決のままです。長期戦に入ってしまいそうですので、最終結果がでたら追記することにします。今まで僕が被害を受けた犯罪といえばキャッチセールスのアンケートに答えてしまい映画の1年間フリーパスを3000円で買わされたことくらいでした。そのときは学生でしたので3000円という数字がけっこう大きかったので、すごく嫌な思いをしたことが記憶に残っています。フリーパスは渡されたので騙し取られたわけではありません。ただし、フリーの映画館というのが僕の家から離れており、電車賃が映画館代を越えるような場所にあるのです。結局、1回も使わずに3000円をドブに捨てたようなものでした。それ以来、疑り深くなったことは確かです。そして、トルコで起きたあの事件まで犯罪というものに巻き込まれたことはありませんでした。今回のこの犯罪は額が非常に大きく、恐ろしい経験までしました。その経緯について説明します。トルコの最終の自由行動の日でした。詳しくは「トルコ風呂の話」の5月3日を参照していただければと思います。トルコ旅行2日目で友達に帰られてしまった僕は、この自由行動の日をずっと恐れていたわけです。この日は「延泊」した日であって、本来であれば英語ペラペラの友達と一緒に楽しくイスタンブール体験をする予定だったわけです。ツアーのメンバーは前日に帰国してしまっているし、ガイドさんも家でのんびりしている日なのです。よって、自分ひとりで行動しないといけないわけです。とは言うものの、僕も一人で行動することにそれほど抵抗をもっていません。今までも友達を訪ねて一人行動したことは多々ありますから。そんなわけで、テンションを上げていどんだ自由行動の日です。まずは、床屋へ行ってイルハン・マンスズヘアーにしてもらい、サッカー競技場近くでマンスズのチームBEKOユニフォームを買って、その場で着替えてハイテンション状態。エジプシャンバザールでお土産を買い終わり、日本語のできるトルコ人と会話を楽しみ、大きなカバンを買ってホテルに戻ったわけです。そして、ホテル近くのバザールで何か買いに行こうと思いイスティクラール通りに行った時のことでした。僕が着ていたBEKOのユニフォームについて話しかけてきたトルコ人がいました。彼は親しげに話しかけてきました。僕も時間があったので、彼の話を聞くことにしました。彼は日本語を話せませんが、英語を話せます。僕も最近英語の大切さを身に染みており、英語で会話をして自分を伸ばそうと思ったわけです。近くの喫茶店でビールを交わしながら、話を聞くことにしました。地球の歩き方とデジカメを見せてトルコの話をしました。彼の名前はネイジョーで、トウバヤズットの出身とのことでした。カタカナで名前の書き方を教えたりと、いろいろと話をしました。日本からもってきた「イルハンマン鈴」というコカ・コーラのおまけを彼にあげました。僕は日本の携帯電話を見せ、モバイルカメラで彼の写真を撮ったのですが、特に怒るようなことも無いので、完全に信用していました。だって、悪人であったら自分の写真を撮らせることを一番嫌うはずです。信用しきった僕は、ガラタ塔で夜景を見たいことを伝えると、「僕は4人の彼女がいる。彼女のいる店へ一緒に行こう。みんなで一緒にガラタ塔へ行こう。」と言いました。僕は迷いましたが彼を信用することにしました。僕は彼についていきました。そこはホステスのいるパブでした。テーブルに着くと、ネイジョーの彼女と言う女性とロシア人の女性が席に着きました。ちょっと怪しいと思いましたが、この際、旅のできごとです。1、2万円の出費は覚悟しました。それでも、コーヒー1杯とビール3杯を飲むくらいにとどめました。もちろん女性にへんなことをするようなお店ではなく、普通に話すだけのホステスが着くバーです。前の喫茶店でビールをおごってくれたので、ここの支払いは私の方ですることにしました。少し額の大きな請求がきました。トルコはインフレで桁が多いという話をしましたが、桁がよく分からなかったのですが、恐らく2万円くらいだと思い、クレジットカードにサインをしました。店を出ましたが彼女と言っていた女性はついて来ません。ただのホステスのようです。この次点で疑いをもちましたが、一緒にガラタ塔に行くことにしました。ネイジョーを悪い人と決め付けることはできません。ガラタ塔には日本人が2人いて「なんで、怪しい人についていくんだ!」と警告されました。僕は心の狭い人だな、人を信用する心を忘れてるなー、なんてことを思ったわけです。夜景を見終わり、「マン鈴」のお礼ということで、4$くらいのトルコのお守りキーホルダーを買ってもらいました。ガラタタワーを出ると、「今度は僕がおごるから」と違う店に連れて行かれました。ここのお店は僕が宿泊したペラパラスに近いお店で、やはり同じように地下へ行く暗いホステスバーでした。ここでコーヒー一杯を飲んで帰ろうとすると、「僕のクレジットカードじゃ全額払えないので、半額払ってくれ」と言ってきました。「ふざけるな」と抗議するものの収まりがつかないので、面倒になり了承して、カードを渡しました。カードを渡したものの、奥の部屋に呼び出され連れていかれました。そこには怖そうな男性従業員が集まっており、「他のカードは無いのか?」と仕切りに聞いてきます。どうやた、カードの上限額を超えている請求をしているようです。怖くなった僕は店を出ようと逃げましたが、扉を閉められ「サインをしろ!」と強く要求されました。ここは地下一階ですので、扉を閉められたら逃げ道がありません。ドラマの1シーンのような怖い経験をしているにも関わらず、なぜか僕は冷静でした。僕は「カードはホテルにある」「サインをするから扉をあけろ」と冷静に交渉しました。別のカードは財布にあったのですが、とにかくここを出ないことには始まらないと思ったのです。英語での交渉は続きました。腕を捕まれていますので外に聞こえるよう大きな声で「HELP ME」と言いました。今、考えると冷静なわりにはアホな行動ですね。そんなこと言ったら、奥に戻されてボコボコにされたかもしれないですから。まさか、旅先で「HELP ME」なんて単語を実際使うとは思いませんでした。こんなことを言っている自分の経験が楽しくなってきました。この時、僕が考えたのは「ホームページのネタができた」が一番だったような気がします。「マイカード イズ イン ホテル、ビリーブ ミー」みたいなことを言って、交渉を続けました。「カードはいいからサインをしろ」と言い出しました。今度は「イフ ユー オープン ドア アンド アウト ミー、アイ ドゥー サイン」みたいなことを交渉していると、ネイジョーも悪いことをしていることに気づいたのか僕を信じて扉を開けさせました。ちょっと記憶に残ってないのですが、その時点でなぜかクレジットカードは手元にありました。今、考えるとここでクレジットカード奪われてたら、逃げられなかったな。そんなわけで、なんとかサインをせずに、しゃばの空気を吸うことができたわけです。ネイジョーには悪いけど、こんなことされて「ありがとう、じゃー、サインするね。」となるわけはないのです。近くにいた警察に「高額な請求をしてくる」と伝えました。しかし、この警官が店主と話しをして店主は「なんもしてやせんぜ」見たいな話をしたと思うと、「一緒に中(地下)に来い」と言うのです。その言い方がすっごい怖かった。もう、警察も信用できないということが脳裏に浮かび、怖くなり急いでホテルに逃げて行きました。一番、怖かった経験は「店の奥につれてかれて囲まれたこと」でもなく「扉を閉められて監禁されたこと」でもなく、警察に「一緒に店に来い」と言われたことです。あの時の警察の目は信用に値しません。って、まんまとネイジョーにだまされている僕の目は節穴ですけどね。とにかく、何の怪我もなく、無事に日本に帰ることができたわけです。もちろん、ホテルにいた間はとっても不安だったことは確かです。いつ、警察が聞き込みにくるか、ネイジョーが仕返しに来るかって思うわけです。しかし、何事もなく日本に帰ることができました。僕がとっても不安に思っていたのは、1件目のお店の請求額です。2件目で限度額を超えたと言われたということは、既にかなりの額を請求されていることになります。考えてみれば2件目はサインをしていないのでコーヒーの只飲みということになってしまいます。日本に戻って、VISAの請求額をチェックすると、予想とおり、1件目の店から多額な請求が来ておりました。そして、さらにサインをしていないはずの2件目の店からも請求が来てました。さすがにこんな費用を払うわけにもいかないので、VISAに電話をして、まずは、カードを止めてもらいました。1件目の店のサインを2件目に流用したのではないかと思います。VISAに調査依頼をしました。現在VISAからの回答待ちなのですが、1件目の費用はサインもあるし払うことは確実のようです。2件目の店ですが、なんとサイン付きの伝票が送られてきました。そのサインを見ると、まるっきり僕が書いた文字です。明らかにコピーしています。猛烈な講義の電話をVISAに入れました。調査を続けるので止めた前のVISAカードを送ってくれとのことでした。偽造サインは犯罪です。これは明らかに犯罪なのですが、やってしまった以上、向こうの店も引くことができなくなってしまっていると思います。「お客様がサインした」と言い張るしかなくなってしまったのです。大金とは言え店の存続をかけて犯罪を犯して手に入れるような額ではないと思うのですが、このへんは日本人と考え方が違うのでしょうか。僕がこのボッタクリバーだったら偽造サインなんて危ない橋を渡ってまで取立てをしないで諦めると思います。この店に手をかした1件目の店だって危ない橋を渡ることになったわけです。1件目の店も摘発されて振り込んだ額が戻ってくるというストーリーになってくれないかと望んでいます。しかしながら1件目の店ですでに振込みの済んだ額はかなりのものです。僕は本当に恥ずかしい日本人だなーとつくづく思います。今、考えると拳銃でももっていて撃たれていたらとか、本当に殴り殺されたらどうしたんだとか、怖い可能性がいくらでもあったことに気づき、自分の行動の軽率さに反省しています。命と引き換えと考えると安い出費で済んだのかもしれませんが、こんな経験二度としたくないことです。反省する気持ちとともに、トルコ人のことを見る目が完全に変わってしまったと思います。トルコには日本でいう「ぼったくり条例(おどして多額の請求をしてはいけない)」は存在しないのでしょうか。こういう一部の悪い人のせいでトルコ人のイメージが下がってしまうのは、非常に悲しいことです。トルコ人はむしろ、親日的な優しい人が多いはずだと私は信じていますが、こういう経験をすると、トルコのイメージがイッキに下がってしまいます。日本人がこういった経験を二度としないように、希望者にはこの店の情報、人の情報をメールしますのでこちらまで('03/7/1)。


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