美幸の話

 お父さんは昔から、子供を持つなら、男の子と女の子をそれぞれ欲しいと思っており、そのことをお母さんと話していました。お母さんは不妊という病気を乗り越えて、お兄ちゃんを産んでくれました。お兄ちゃんが2歳になった時、お父さんとお母さんは、お兄ちゃんに弟か妹がいた方が良いと思い、再び不妊の治療を受ける事にしました。お兄ちゃんの時もそうでしたが、何度も失敗し、諦めました。しかし、不妊治療ではなく自然に美幸の命を授かることができました。それから美幸はすくすくと育ちました。12月に帝王切開での出産になりそうな事態にもなりましたが、問題なく1月での自然分娩での出産予定となりました。美幸の名前はなかなか決まりませんでした。お母さんがいくつか候補を出した1つに「美咲(みさき)」という名前がありました。お父さんにはどうしてもつけたい漢字がありました。それは、「幸」です。美咲のおじいちゃんの名前の一字という意味もありますが、一番の理由はお父さんのおばあちゃんです。お父さんのおばあちゃんの名前は「コウ」です。そして、4人の息子と娘に「幸」という漢字を付けています。恐らく「コウ」という意味は「幸」なのだと思います。正直に言うと、お父さんが子供の頃は、おばあちゃんの名前を変な名前だなと思っていました。しかし、今に思えば、4人の息子に「幸」という漢字をつけたのは、自分の名前が「幸せ」という意味だと知っていたからだと思います。お父さんにはお母さんがいません。幼稚園の頃にお父さんのお父さんとお母さんが別れてしまい、お父さんはおばあちゃんとお父さんと叔父さんに育てられました。つまり、お父さんにとっと、おばあちゃんはお母さんの代わりでした。そのおばあちゃんが1989年の1月5日に亡くなりました。つまり、美幸が生まれた1日前が、お父さんのおばあちゃんの27回忌でした。お父さんは美幸は、おばちゃんの生まれ変わりなんじゃないかと思い、「コウ」を意味する「幸」という漢字を使いたいと思いました。ちょっと強引かと思われるかもしれないけど、「幸」という字は「サキ」と読むことができるので、「美幸」と書いて「ミサキ」と読む名前を考えました。字画は非常に良い画数ということもあり、お母さんも納得してくれました。つまり、お母さんからは、名前の響きを贈り、お父さんからは、名前の漢字を贈りました。美幸は1月6日の出産予定日の通り、産まれました。1月6日の朝に兆候があり、生まれたのは午後11時23分なので、だいぶ時間がかかり、お母さんは辛かったようですが、無事に鳴き声をあげてくれました。夕方にお兄ちゃんと一緒に、お母さんに会いに行ったけど、まだまだ産まれそうもないのでお母さんの顔を見てすぐに帰ることになりました。美幸が生まれたのを知ったのは、お母さんからの電話でした。お兄ちゃんの時のように立会い出産をしたいと思っていたのですが、お兄ちゃんは出産に立ち会うことはできませんでした。翌日もすぐに美幸に会うことはできず、15時の面会を待たないと会えませんでした。正直な話をすると、お父さんは、お兄ちゃんの時も、そうだったけど、高齢での自然妊娠なので不安がありました。妊娠中の定期健診でも心臓の部屋が見えないという話があったので、不安がありました。電話で元気で泣いたという話を聞いて少し不安が取り除かれました。お母さんはお兄ちゃんの時と同じく出血が多かったようだけど、普通に話ができたので安心しました。翌日の面会で、初めてお兄ちゃんと一緒に美幸を見ました。ちょっと、アトピー性皮膚炎の様な感じがあり少し心配しましたが、元気な美幸の顔が見られて嬉しかったです。お兄ちゃんも美幸を抱っこしました。短い面会の時間でした。翌日も美幸の顔を見にお兄ちゃんと二人で面会しました。土曜日は美幸のおじいちゃんが来てくれました。美幸をおじいちゃんが抱っこしました。その翌日の日曜日にはお父さんの兄と弟が面会に来ました。つまり、美幸の伯父さんと叔父さんです。美幸の3人の従兄弟も来てくれました。その翌日の成人の日に美幸は退院しました。聴力検査も問題ないと診断されました。健康な体で産まれてきてくれてありがとう。お父さんとお母さんとお兄ちゃんとペットのチワワの4人と1匹の家族が揃いました。息子と娘を持つというお父さんの夢を叶えてくれたお母さんに感謝するとともに、お父さんとお母さんのところに産まれてくれた美幸に感謝しています。お父さんもお母さんも美幸のおかげで、更に新しい経験ができて、嬉しいです。成長していく美幸の姿を見るのが楽しみです。これからも、お父さんは美幸のために一生懸命頑張ります。だから、健康にすくすくと育ってください。お父さんやお母さんより先に天国へ行くような親不孝は絶対にしないでください。お父さんは美幸が大きくなって、彼氏を家に連れてきて、「娘はやらん」と言える日を楽しみにしています。美幸が選んだ人であれば、反対はしませんが、きっとそのときになったら反対する気持ちになるんだろうなと感じています。美幸が新しい家族を作って、お父さんがお爺ちゃんになるまで、美幸を見守っていたいと願っています。お父さんとお母さんの子供として産まれてきてくれて、本当にありがとう。('16/2/1)。


エッセイのホームページに
戻る 戻る

satoru@sumadore.com